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「ツィヴィフォニア・ガード!」
兄さんの前にオレンジ色の、少しだけ黒く輝く魔法壁が現れる。兄さんの魔法の色ではないし、僕だってとっさに防御魔法なんて出せない。そうなると残るのは――
「今の魔法って、リコル?」
「あ~……見ちゃった?」
悪いことをしてしまったような顔でリコルがこちらを見ていた。なんでそんな顔するんだ? リコルは何も悪いことはしていないのに……。
「ありがとう、リコル。兄さんを守ってくれて」
「いや~お礼言われるほど大したことじゃ」
僕は兄さんのもとへ駆け寄った。兄さん、きっと怒っているよね? さっきからずっと黙っているし、僕が思っているよりも相当怒っていたりして……。
「兄さん大丈夫? ごめんなさい、緊張して杖がずれて、それで……」
「……」
兄さんは中身がどこかへ行ってしまったようだった。もしかして僕の魔法に怒っているんじゃなくて、リコルの魔法に驚いたのかな?
「……兄さん?」
「あぁアルスト、俺は大丈夫だよ」
「よかった~」
「今日の特訓は終わりにしよう。明日は今日の続きをしような」
「うん。リコルも今日はありがとう、また明日な」
「ほ~い、また明日~」
僕のミスで、今日の特訓はいつもより早く終わってしまった。杖を持った時に緊張するの直さないと、またあんなことになってしまう。
でもリコルの魔法の色、かっこよかったな~。全然変な色じゃないから、次の特訓でも使ってほしいな~。
まだ空が青い時間。リコルの魔法の秘密を知らない僕は、明日の特訓を楽しみに、その日を穏やかに過ごしていった。
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