魔法よりも大事なもの

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「我が魔力を、秘めし……ウォルガーナの短剣よ、我が魔力を、短剣とともに、我が弟アルストへ、半分与えたまえ……!」  呪文を唱えると短剣が輝いて、短剣を通じて僕の中に強くて優しくて暖かい兄さんの魔力が入ってくるのがわかる。 「兄さん、どうして僕に魔力を?」 「リコルが危ない……やつを、止めてくれ……」  言いながら兄さんは黒いローブの魔法使いが逃げた森の方へ指をさした。 「リコルが森にいるんだね。すぐに行って、後で兄さんの傷を治してあげるから」  兄さんをリビングのソファに寝かせると、預かった短剣を持って森へ向かった。まだ午前中なのに森の中はあまり日が当たらず薄暗かった。黒いローブの魔法使いに見つかる前にリコルを見つけよう。それから兄さんの傷と毒を治して、この魔力を返さなきゃ。 「リコルー! どこにいるのー?」  大きな声で呼びながら森の中を走っていると、左側の木々から葉っぱが僕を追うように大きく揺れている。怪しく思った僕は走るのをやめると、木の揺れも僕と同じ位置で止まる。 「そこにいるのはリコル? それとも、黒いローブの魔法使いか?」  短剣を構えて、怪しいやつが現れるのを待つ。薄暗い木々の中から現れたのは、
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