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背中には定期的な衝撃。
冷たいドアを挟んだ向こう側から、叩きつける音。
「なあ凪、もういい加減にしよう」
諭すように呟く声。
でもその表情は決して穏やかではないはずだ。
橘くんは、そういう人だ。
わかっているから、返事はしない。
わかってしまうから、ドアは開けられない。
「なあ……、聞いてるんだろ」
少し焦れた声はやっぱり橘くんのそれで、それが私を絶望させる。
何を考えているのか、わかってしまう。
それはきっとお互いに。
向こうも私の表情なんて分かり切ってるはずだ。
だからこれは、不毛な時間以外の何物でもないんだ。
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