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問題の電話があった翌日、Aがオフィスに出勤するとあの家の電話番号を記した名簿がまるごと消えていた。
誰に聞いても、名簿の行方はわからずじまいだったのだという。
それ以上にAを怯えさせたのは、問題の名簿を持ってきた人が誰なのか、どんなに調べてもわからなかったことだ。誰に聞いても、そんな名簿に覚えはないと首を捻ったらしい。
Aはその一件があってからすぐに、電話を掛けるバイトは辞めたと言っていた。
その出来事から数年たったそうだが、Aは今でも電話が苦手だ。
着信音がなるたびに、あの老婆の恐ろしい声が耳元によみがえると言っていた。
「返せ……」
恨みのこもった低くねばつく老婆の声を、Aはいまだに忘れることができないという。
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