自分に無い輝き

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夜の神は、「月でさえ眩しい」と言った。 月は言った。 「わたしが眩しいですって? それは、太陽がわたしを照らしているからですよ」 「太陽?」 夜の神は、太陽のことを知らなかった。 「太陽とは何者だ」 月は教えた。 「月が夜(あなた)の象徴であるように、 太陽は昼の象徴なのです」 夜の神は唸った。 「月よ、お前は昼の神を見たことがあるか?」 「もちろんですとも。 わたしは常にあなた方を見ています」 「昼の神とは、美しいものなのか?」 「もちろんですとも。 月(わたし)のようなものよりも輝いています」 「輝きか」 「輝きです」 夜の神は、心に大変重い重しを乗せられた気分になった。 なんせ、自分には輝きがないのだから。 「なぜ、わたしには輝きがないのだ。なぜ…」 「ありますとも」 月は胸を張って言って退けた。 「この、真夜中の星空をご覧ください。 なんとお美しい」 夜の神は、改めて辺りを見回す。 そこには瞬く星々が無数に散りばめられていた。 「昼の神は、輝くものをひとつしか持っておりません。 太陽です」 月は言った。 「しかし、あなた(夜の神)はこんなにもたくさん輝くものをお持ちです」 「こんなにも、たくさん…」 夜の神は感嘆した。 「わたしは、お前以外なにもない、真っ暗な存在だと思っていたよ」 夜の神は、月が眩しいと思ったが、それは自分自身の表れであると感じた。 「わたしにも輝きがあったのだね」真夜中のお茶会での会話は、夜の神を元気付けるものとなった。 「真夜中はこわい」 「真夜中はなにか出る」 と言われ続け、夜の神は自信を無くしていたのだ。 それを取り戻すことができるたのは、 真夜中に輝く星々と月であった。 夜の神の神秘的な美しさは、 昼の神の比ではないと皆が思っていたのに。 それを知らなかった夜の神は、なんとも嬉しい気持ちになった。
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