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夜の11時。ようやく最寄り駅に到着した。 私は豊平睦美(とよひらむつみ)。社会人も三年目に突入。そして重要な仕事を任されることが増えてきた。 だからと言って、部長のミスでここまで残業しなければいけないのは納得いかないけれど。 何もなければ帰ってくるのは夜の八時過ぎだけど、最近この時間に帰ってくることが増えた。週二日はこの時間だ。 でもいつもこの時間になると、『ある人』のことが気になってしまう。 いつも通り、駅の改札を出て目の前の24時間営業のスーパーに駆け込む。 ここは深夜でもお惣菜が残っている。 毎日カップ麺とコンビニ弁当にはさすがに飽きてしまうので、非常に助かっている。 私は周りを見回してその人物を探す。 やっぱり今日も居た。 いつも夜11時頃に見かける人。 スーツ姿で少しひょろっとして眼鏡をかけている、多分少し年上の男性。 彼の買い物かごにはいつも、りんごが入っている。 よくある透明な袋に三つぐらい入っているやつ。 最初の数回見かけたときは「あぁ、りんご好きな人なんだなぁ」ってそう思っていた。 でもさすがに、毎回見かける度にりんごが入っているともの凄く気になってしまう。 そこまでりんごが好きなのか? 何か彼をそうさせる?本気で気になっていた。 と言うのも、私の実家はりんご農園を営んでいる。 色んな種類を植えていて、ほぼ年中りんごが取れる。いわゆる大規模農園。 一人暮らしの私のアパートに、毎回段ボール一杯につまったりんごが送られてくる。出荷できないりんごが。 私は正直食べ飽きてしまったので、りんごの何が彼を突き動かすのか非常に気になって仕方なかった。
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