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「うちの家は、代々狢が憑く人が出る家系らしいです。田舎、と言うか祖父の実家には狢を奉った祠もあるんです」 なるほど、少し興味深くなって身を乗り出して聞いてみた。 「先日田舎に行ったところ、狢らしき獣が夢に出てきたんです。  私に向かって『そろそろそっちに行きたいんだ、早くしてくれ』と言われまして…」 「どういう意味ですか?」 「僕もよくわからないんです。でもその獣に『毎日神棚にりんごを供えろ』と命令されまして…毎日備えてるんですが、翌朝に無くなっているんです」 「無くなっている?!」 「ええ、無くなっているんです」 本当に頭がおかしい人かもしれない。 確かにそう思ったけれど、何となく祐介さんが嘘をついているようには思えなかった。 「何回かカメラをセットしてみたんですけど、必ずと言っていいほどノイズが入って、その次の瞬間からりんごが無くなっているんです」 もはや神を超えたオカルトじゃないか。 「供えなかったらどうなるんですか?」 そう聞くと「高熱になるんです」とのことだった。 「それだけじゃなく、夢にうなされるんですよ。獣に首を絞められる夢を見ます。  夢にしては、妙にリアルな毛の感触もするんです」 本来であれば『精神病院に行ってこい』と言いたいところだ。     
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