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明るく暖かい光の中で私は我に返った。
今まで何をしていたのか覚えていない。
目の前に広がる景色は、みたこともない住宅地だった。
坂に並んで立っている家の間には小川が流れている。
透き通っている水が光を反射して輝いて見えた。
「ミキちゃん!?」
懐かしい声が聞こえた。私は振り返る。
幼馴染のヒトミが驚いた表情で私を見ていた。
そうだ、私は…
「ヒトミに会いに来たんだ!この辺に住んでいるの?」
私の問いに、ヒトミは動揺している。
鳥の叫ぶような声が聞こえた。
ヒトミは、慌てて私の手を掴み走り出す。
「え?何?」
「ここに居ちゃダメ!」
あちこちから奇妙な声が聞こえてくる。
ヒトミは逃げるように私をトンネルへ連れてきた。
「早く、ここから帰って!もう来ちゃダメだよ!」
私の背中を押すヒトミ。
暗闇の中に放り込まれた。
何も見えない…
私は光を探した。
暗闇の中、見えてきたのは私の部屋の天井だった。
そうだ…ヒトミは3年前自殺をしたのだ。
もしあそこが、あの世なのだとしたら、彼女は自殺したにも関わらず綺麗な場所にいることができているのだなと思うと嬉しかった。
今、何時だろう?
真夜中であることは分かる。
私は時計を見ようと半身を起こそうとした。
しかし動かない…いや、動けない。
何者かに体中を押さえつけられている感触がする。
私は、恐怖に捕らわれながらも勇気を出して左右を見た。
黒い影が目を光らせて私を囲み、体を押さえつけている。
悲鳴を上げようとしたが、それは叶わなかった。
私は再び闇に落ちる。
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