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「ひより」
「……潤…」
お姉ちゃんとお昼ご飯を食べるつもりで待ち合わせ場所へ来た私は、思いがけず涼兄ちゃんに会えたことに喜ぶばかりで、何で二人が一緒に待ち合わせ場所へ来たのかを深く考えることもなく、ウキウキしながら涼兄ちゃんの手を引っ張ってレストランへ入り、席へついた。
しばらくして、涼兄ちゃんと、お姉ちゃんが、「聞いて欲しいことがあるの」と切り出したあと以降の、記憶があまり、無い。
覚えているのは、お姉ちゃんの、辛そうな顔と、涼兄ちゃんの、申し訳なさそうな顔。
あとは、もう、一つの言葉以外、二人に何を言われたのかも、イマイチ、思い出せない。
息があがるほどに全力で走ったはずなのに、苦しいのは、喉じゃなくて、胸の奥底で、立ち止まった瞬間に、ボロボロ、と涙が止まることなく次々に流れ出てくる。
道の真ん中で、泣くのを止められなくて。
その場にしゃがみこんだ私を見つけたのは、涼兄ちゃんじゃなくて、涼兄ちゃんに、とてもよく似た人。
「立てるか?」
伸ばしてくれる手を掴めば、グイ、と潤に身体を引き寄せられる。
「あっち、行くか」
あっち、と潤が指を差した方向が、どっちの方向だか、分からない。
ゆっくりと私の手を引いて歩き出した潤の後ろで、私はずっと、泣き続けていた。
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