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「大丈夫か?」
「……冷たい」
「冷やさないと明日の朝、腫れるぞ?」
「別にいいもん」
「良くない」
「なんでよ」
保冷剤を瞼から離して言うひよりの手を瞼の位置に戻す。
「応援する、って、決めたんだろ」
「……うん」
小さく呟いたひよりの声に、俺の胸の奥底が痛い。
「腫れたままの瞼じゃ、二人とも気にするぞ」
「……うん」
ひよりの手が、微かに震えていて、そのまま、手を頭へ動かし、ゆっくりと撫でれば、微かな嗚咽が聞こえてくる。
「いつも、頭、撫でてくれてた」
「うん」
「いつも、手、繋いでくれてた」
「ああ」
「ひよりちゃん、って呼ばれるのが、嬉しくて」
「だろうな」
「好きって、言った時の、困った顔も、好きだったの」
「……うん」
「全部、全部、全部、大好きだったの……!」
「……知ってるよ」
ひとつ、ひよりが、兄貴の好きなところを云う度に、その時のひよりの様子が目に浮かぶ。
ひとつ言われる度に、俺なら、どう思うんだ?と聞きたくなる。
「何で、お姉ちゃんなの…」
「……ひより」
「何で、こんなに辛いってわかってるのに、お姉ちゃんを嫌いになれないんだろう…!」
「……うん」
「…何で、私、お兄ちゃんを好きになっちゃったんだろ……っ」
保冷剤と、瞼の隙間から、ポタポタポタ、と涙が落ちていく。
「何で、私じゃ、ないのっ」
振り絞るように言うひよりの言葉に、グイと、ひよりを思い切り抱きしめる。
「泣くなら、ちゃんと泣けよ。顔、見ないから」
「……っ」
肩に、顎を乗せ、頭をトンと寄せながら言えば、うああぁ、と俺に抱きついたまま、ひよりはようやく声をあげて、泣いた。
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