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「ひより」
「……じゅ」
「探した」
グッ、と泣きそうな顔をして私を抱きしめたのは、会いたくて会いたくて会えない人の、面影を持つ、好きな人の弟だった。
「涼兄ちゃんは…」
「兄貴は…元気だったよ」
「…お姉ちゃんも?」
「…ああ」
静かにそう問いかけた私に、同じように、静かに答えた潤の腕に力が入る。
「潤」
「…ん?」
「何で、私、妹、なんだろ」
「ひよ」
「何で、私、好きになっちゃったんだろ」
涙で滲んだ世界は、この1週間で、何回、見てきたのだろう。
何回、この世界を見ても、その度に、胸は痛くなる。
その度に、思い知らされる。
「私は、涼兄ちゃんに……っ好きになって欲しいなんて、思っちゃ、いけなかったの…?」
誰も、教えてはくれない私の疑問は、未だ振り続ける雨に、静かに流れて、消えていった。
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