5人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
そう言ったお父さんの顔は、とても強張っていて、お母さんは、キッチンのほうを向いて、微かに肩を震わせている。
「今、政府から、発表があってね。4月2日、地球に、隕石が衝突するらしい」
「…はい?」
何を、そんな冗談を。
そんな事を思ったけれど、お父さんの表情も、チラと見えたお母さんの涙も、さっきから、離そうとしないお姉ちゃんの手も、全部、全部、お父さんの話が嘘じゃない、と声にせずとも、私に伝えてくる。
「…嘘じゃ、ないの?」
「…嘘じゃ、ないよ」
ぐん、と引き寄せられたお姉ちゃんの身体も、小刻みに震えている。
「お姉ちゃ」
「嘘じゃないの、誰も、どうにも、出来なかったの」
そう呟いたお姉ちゃんの声は、震えていて、私は、そっと、お姉ちゃんの背中に、手を回した。
「お姉ちゃんは、どうする?」
はっきりいって、あまりにも衝撃的すぎるニュースで、食欲なんてものも、吹き飛んでいたけれど、お母さんが、「ご飯、食べよっか」と変わらずに優しく笑い、「そうだな」とお父さんが頷き、私たち家族は、久しぶりに4人揃って、いつもよりも少し遅めの朝食を食べ始めた。
「あたしは…パンが良いかな」
「わかった」
「ありがとう、ひより」
珈琲を入れているお姉ちゃんの横を通り、朝食の手伝いをする。
最初のコメントを投稿しよう!