第2話 地球滅亡のお知らせ

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「お昼ごはん、奢ってあげるから食べに行こっか」 「え、行く!」 「じゃあ駅前で待ち合わせね」 「わかった!」 「じゃあ行ってくるね」 「はーい」 ヒラ、と手を振って、部屋を出て行ったお姉ちゃんからは、ほんのりと甘い香水の匂いがした。 「…よ」 「あれ?部活は?」 「無い」 「サボり?」 「違うし」 パタン、と玄関のドアを閉め、道路までの短い階段を降りれば、階段の先に、潤が片手をあげて立っている。 私の通う中学のすぐ近くに、お姉ちゃんも、涼兄ちゃんも通った高校があり、潤もまた、同じ学校に通っていて、私もまた、4月に入学する予定だった。 「案外、普通な」 「潤こそ」 「まぁな」 潤の言う、「案外、普通」というのは、今朝の『地球に隕石が衝突する』というニュースのことだろう。 確かに、とても驚いたし、正直、未だにやっぱり冗談なのでは?とも思うし、実は大人総出で、私を騙しているのでは、とも思ったけれど、ひっきりなしに通知される友人たちのやり取りの通知に、そんな面倒なドッキリをするわけもないか、と、朝食のあと、私はやけに冷静に現状を把握し始めていた。 通い慣れた道を、いつものように二人で歩く。 「巨大な隕石って、どんななのかな」 「月と同じくらい、っていう説もあったな」 「へえ…そんなのが、来るんだね」 何の気なしに、空を見上げれば、冬の澄み切った青空が広がっている。 「制服、着たかったなぁ」 「着ればいいじゃん」 「そういうことじゃなくて!」 「分かってるよ、そんなこと」 ポン、と置かれた手は、いつもはグシャグシャ、と撫でるのに、今朝は優しく頭を撫でてくる。 「潤、動きがぎこちないね」 「うっせ」 「ふふ」 不器用な潤の手が、何だかくすぐったくて、くすくすと笑っていれば、潤の手が、ピタ、と止まる。 「なぁ、ひより」 「なぁに?」 「…今日」 「今日?」 名前を呼ばれ、振り返って見た潤は、痛みを堪えるような表情をしていて、「潤?」と彼を見ながら名前を呼ぶものの、「…何でもない」と視線をそらされる。 「じゃあな」 「あ、潤!」 まるで視線から逃げるように、高校の敷地内へと入っていく潤の名前を呼んでも、潤は振り返ることは無かった。
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