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「どうだろ? 鉄の表面にクロムが入るのかもしれないが、ほんのちょっとだろう。特に悪さするとは思えないがな。そういえば、これってクロム以外の成分が分かってないんだ。へんなものが入っているかもしれない。ステンレスを作るには問題なかったようだが」
「使うの止めた方がいいですかね」
「他に適当なものがなければ、使ってもいいだろ。あ、そういえば焼き入れだけどな」
「はい?」
「急激に冷やすから鉄が強くなるんだから、その温度差が少なくなっては、意味がないと思うんだ」
「ええ、それはそうですけど。割れるほどの差はいらないかなって」
「でも、刀の全部がバリバリに割れたわけじゃないだろ?」
「それはまあ、そうですが」
「厚みの違いじゃないのかなって思うんだが、どうだろ?」
「厚みの違いですか?」
「刀ってのは、刃の部分は細く、峰に近づくにつれて厚くなってゆくよな」
「あっ、そうか。刃先と峰では冷えて行く時間が大きく異なりますね」
「当然、厚みのある方が熱容量は大きい。これを急冷すると、表面だけがまず冷やされるので、まだ熱い中と冷えた外とで大きな温度差が生まれることになる。だから割れるんじゃね?」
「とすると、冷えて行く時間を合わせればいいということになりますか。それなら、泥を塗るときに、峰側を厚く、刃先は薄く塗ったらどうでしょう」
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