第3話 めっき

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 ちなみに、めっきは外来語ではない。鍍金という和製漢語である。だからメッキと書くのは間違いだ。電子部品業界などではもう必須となった表面処理技術のひとつである。それなら多少のことは知っているが。 「詳しいかどうかは分からんが、何をめっきするんだ?」  じじいは、何を言っているのかこのアホは、という顔をした。何を言っているのだこのじじいは、という顔でお返ししてやった。ぐぬぬぬぬ。とにらみ合っていると青年が言った。 「めっきと言えば金めっきに決まっているだろ。それ以外にできるはずないからな」  つまりは金めっき以外には、めっき技術はない世界だということか。ほら、だんだん設定が出てくるでしょ?  ……それはともかくとして、金めっきしかないのなら、おそらくそれは装飾品ということであろう。 「金めっきをさせる側のほうは何だ?」 「ああ、それは剣だよ。この子が持っているような」  といって、双子の片割れに視線を向ける。え? という顔をしたが、空気を察知したのか自分の剣を抜いてテーブルの上に置いた。  置かれた剣を、俺はしげしげしげとひとつ多めに観察する。ソリはなく両方に刃がありほぼ左右対称だ。そして刀身は細く柄にはこてこてとした装飾が施されている。これはレイピアと呼ばれる片手剣であろう。 「材質は鉄だよな。これに金めっきするだけなら簡……重っ!! 何だこれ、めっさ重いぞ」     
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