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そしてデータを集めているうちに俺は気がついた。雨の日に濡れるのは足(特にヒザより下)であるということと、それは前よりも後ろ側が多いということに。
つまり、降っている雨よりも、カサからの雨だれが多くかかっているということが分かったのだ。
それならば、雨水がカサの上にあるあいだに乾かしてしまえばいんじゃね? と考えた。
そうすれば、カサの骨からポトポト落ちる雨だれで自分が濡れることはなくなる。周りの人にポトポトかけて嫌な顔をされることもなくなる。グルグルと回転させて、雨水が飛び散る様を見る楽しみもなくなるが、そのぐらいは我慢せい。
自分のカサを店の前にある傘立てに入れる必要もなくなる。濡れていないのだから、バッグに入れるなり手で持って入れば良いのだ。これで盗難の心配もない。
しかし沸点の高い水を熱で乾燥させるのは不可能である。それをやると持っている人がほぼ黒焦げになる。そこで考えたのが振動だ。
カサの軸に振動発震のための機構とバッテリーを組み込み、カサの布には別に開発した(これも特許取得済み)受動素子機能のある繊維を編み込んだ。
カサに落ちた雨水を、振動によって瞬時に気体に代えてしまうのだ。理屈としては超音波で水を気体に変える加湿器と似ているが、俺のカサは振動数が1桁以上違う。それでようやく気化速度が実用レベルに達したのである。
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