第4話 俺にそっくり

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 ユウは捨て子であった。このハザマ(迫間)村――現在地のことである――の村長宅の前に捨てられていたのだ。実は同じような境遇の子は他にもたくさんいる。村長は村の孤児を代表して育てているようなものだ。  村長が個人的孤児院の運営者である。慈善活動と言って良いかもしれないが、その子らは8才になればただ同然で働きに出されるのであるから、村にとっては貴重な人材供給の場所でもある。  その年齢の子供はどの会社でも欲しがる金の卵なのである。  ユウは5才の頃には計算機を使わず7桁の足し算引き算をこなしていた。日本でのそろばんでいうなら3~4段くらいの技量に相当する。  同世代の子供たちが虫取りなどに興じるのを横目に、ひたすら読書に励んだ。日に数冊という凄まじい読書量を誇った。  それらのことが高く評価されて、ヤマシタ工房という村一番の大企業(建築業)に特例でもって丁稚奉公できたのである。  そして6歳のときには、材木の新しい加工法を編み出して、ヤマシタ工房に大きな利益をもたらしたのだ。机上の天才という二つ名はそのときに付いたものだ。  しかし、生来の人付き合いの悪さや態度の横柄さがネックとなり、ここ数年は得意なデスクワークではなく、苦手な肉体労働ばかりをさせられていた。     
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