第4話 俺にそっくり

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 だが、そんな中でユウはある発明をした。釘や接着剤を一切使わずに、木材を組み合わせるだけで1軒の家を建てることが可能になるという画期的な技術だった。  だがそのためには高度な加工技術が必要であり、対応できる職人は少なかった。さらに、1軒の家を建てるのに必要な材木は、ユウの工法にすると数十種類にも及んだ。現場の作業者にはどれとどれを組み合わせれば良いのか、まったく分からないという問題も起きた。種類が多いということは、それぞれの在庫を常に持たないといけないというジレンマもあった。  ユウの発明を使った工法で家を建てている最中に、その事件は起こった。現場が拒否したのである。複雑過ぎる組み合わせに、これならただの角材で釘を使ったほうがずっと早いと言い出し、ユウ加工のされた材木をすべて破棄したのである。  それを聞いたユウは烈火のごとく怒った。なんで俺の言う通りにやれないんだ、加工の形状ぐらい覚えれば良いことだろうと。  10才児が中年のベテラン作業員にである。  この件でユウは仕事仲間から総スカンを食らい、発明はお蔵入りとなった。それからユウはあらゆる仕事から外されて、ただ工房の事務所で本を読むだけという身になったのである。     
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