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もちろんそんな境遇がいつまでも続くはずはない。タダ同然で使えるとはいえ、食費の面倒を見るのは会社なのである。少しでも働くと思えばこそ雇っているのに、これでは足手まといにしかならない。
ヤマシタの社長はそのときはすでにユウが最初にやった発明のことを忘れていた。それが当たり前になっていたからである。コロンブスの卵でも手品でも同じである。ネタが分かって慣れてしまうとそれは当たり前のことになるのだ。
ユウの食費など、その利益に比べれば微々たるものだ。ユウにそれだけの才能があるのだから、うまく使えばこれから先も利益を出す発明をいくらでもしてくれる、とは社長は考えなかった。
その利益の上に自分の会社が成り立っているのに、あれはまぐれだと思い込んだのである。
ユウへの嫌がらせが始まった。この世界の慣例では、丁稚奉公が開けるとそれまでの報酬を慰労金という形でまとめて支払うことになっている。
勤続年数を考えると(ユウの発明による利益を入れなくても)たいした金額ではない。社長はそれさえも惜しんだ。その前に追い出してしまえ、それが社の方針となった。
そして陰湿なイジメが続いたことに嫌気が差して、ユウは会社を抜けだし居酒屋に入った。そこで生まれて初めてのウイル(アルコール度4.5%)を飲んだのが、つい先ほどのことである。
そして、俺と入れ替わった。
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