鈍感な心と真夜中の住人

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 僕は迷子のような足取りでイズミの気のもとに行き、暴れる枝をどうにか離さないでいる様子を目の当たりにした。大きいせいもあってかイズミの木は乱れ方も恐怖を感じるほどの勢いだった。  「イズミ!」  姿は見えないけど僕はそう呼んだ。もちろんイズミは現れないしその声に対して何か反応があるわけでもない。  僕は雨粒が目や口にはいることもかまわずに木を見あげて「出てきてよ!」と叫んだ。でもその声さえも風はさらっていく。  自然の爆音しか耳に入ってこず僕はあたりを見回しながらイズミの姿を探したその時だった。  上のほうから雨風とは別のメキメキと聞きなれない音が聞こえた。  一体何の音だ。僕は上を見上げたその瞬間視界は暗転しさっきまで音で満たされていた耳には静寂が突き刺さった。    「リョウヘイ大丈夫ですか」  ふと静寂がやみ僕の耳に直接イズミの声が届いた。実に一か月以上ぶりのイズミの声に懐かしさすら感じた。 一体どこにいたんだ。どうして僕の声に反応してくれなかったんだと文句を言おうとしたけど全く口が動かず、声も出せなかった。そういえば体も動かないし目を開けているのに真っ暗で何も見えない。  「今は無理をしないで。こんな形で悪いけどお別れを言いに来ました。本当に申し訳ないけれど、私はもうあなたの前に姿を現すことができなくなりました」     
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