鈍感な心と真夜中の住人

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 「学校なんてつまらないよ。義務教育だから仕方がないけどそうじゃなくても高校は行くだろうな、僕は」  「何かを学ぶのは良いことだ。私はこの木から見える景色以外みることはできないし何かを学んで生かすこともできない。ただここで朽ちていくだけだ」  「イズミは枯れたりしないよ。だってこんなに大きな木じゃないか」  「寿命はくるんだ。私にはわかっている。この木も古い。それに君には言っていなかったけど前は昼間でも姿を現すことができたんだ。でもいまはそれができなくなった。それだけ老いたということなんだ」  「今までにいろんな人と話をしてきた?昼間にも」  僕が初めてイズミに会ったときは夜だった。僕が眠れなくて夜中家を少し家を出た時にイズミと出会った。だから僕にとってイズミは真夜中の住人という印象が強い。そのせいもあってか日に照らされるイズミを見ることは想像できかなかった。  「もちろん。いろんな人と話をしてきた。昼間の太陽も好きだったし小鳥が飛んでくる様子を見るのも好きだった。人間は普通は昼間に働くからその様子を見るのも好きだった。でももう親しかった人間は皆死んでしまった。人間の寿命は短い。百年にも満たないからなおさらだ」     
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