鈍感な心と真夜中の住人

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 イズミの姿はすっかり見えなくなったけど僕はイズミが上がっていったほうを見上げてそう返事をする。  イズミの姿をとらえない代わりに僕の視線の先には月と星があった。  月と星は光というけれど今の僕にはどちらもただの穴だ。空っぽの穴のようだ。そう見えたのは初めてだった。どうしてだろうと思っていたが数日後にその答えが出るような出来事が起こっていた。  イズミは姿を見せなくなった。  毎晩イズミに会っていたわけではない。僕の勝手な時間にイズミに会いにいっていた。今までどんな時間でも僕の前に来てくれていたのにイズミが来ないのは初めてだった。  家の裏に立つ木はただそこにあるだけでイズミだということは頭ではわかっているのに僕にはそこら辺の木と何ら変わりないという感覚しかない。  真夜中の下で僕は必死にイズミの姿を探すけどどこにもいない。木の葉のざわめきが今は耳障りだ。  「イズミ」  声をかけるけど暗闇に吸い込まれるだけだった。  暗闇の中で僕の心を冷たく黒いものが這った。不安や焦燥や恐怖が入り混じったものだということはわかったが、それをぬぐうように「きっと休んでいるだけなのだ」という根拠のない自信がどうにかその黒いものを受け止めようとした。  「イズミ」     
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