鈍感な心と真夜中の住人

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 もう一度呼ぶけどやっぱり姿は見せてくれない。そして声も聞こえない。  僕は立ち尽くして木の幹に座り込み額を当てた。鼓動を感じたかった。でも何の音も聞こえず僕の息遣いだけがそばで聞こえる。  そしてずっと上のほうで葉と枝をなぜるように風が吹いている。どちらかというと激しく風だけの音が耳障りでイライラする。  僕が今必死でイズミの存在をさがしているのにと理不尽な怒りで頭の芯が痛んだ。痛みのせいでよけいに集中できずその日はあきらめて家に入った。 「今日はやけに風が強いな」    ニュースで台風が近づいていると知ったのは次の日の朝だった。そしてそのまた次の日に僕が住んでいる地域に台風が上陸しまれにみるほどの爪痕を残そうとしていた。  もちろん学校は休みなり交通機関は全て止まり親の仕事ですら緊急の休みとなった。洪水ですべてが飲み込まれる地域もあり思った以上の被害にテレビで放送する内容ははすべて台風のことだった。  少しだけ命の危険を感じていたがそれよりも僕はイズミのことで頭がいっぱいだった。あの木はもう何年も生きている。今回の台風でなにかあったらもしかして本当にイズミとはもう会えないのではないかと思っただけで呼吸が浅くなる。  「裏の木が倒れてこないといいんだけどね」     
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