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母親が心配をしてそう言ったがそれはイズミのことを心配しているのではなく自分たちに被害が及ぶことや家が破壊されることに対してのものだ。
「そんなことないよ」
母親がイズミの存在を知らないのはわかっていても僕の声は荒くなった。
そんなことあるわけがない。今までだって台風はたくさんやってきたけどイズミは無事に生きてきた。だからこうして僕に会うことができたんだ。
だから今回だって大丈夫。いくら老いているからってイズミが倒れるはずがない。
「僕は信じてやまなかった」と自信をもって言いたかった。
実のところを言うとそんな自信はこれっぽっちも持っていなかった。自信という漢字はどう書くんだったっけと思うくらいに僕は強くなる雨と風を窓から見ていた。
台風が最も接近している時間は真夜中だった。当然眠れることはなく雨粒を一粒一粒数えるように外に集中していたけど、どうしても気になって僕は傘をさすこともなくイズミのもとに行った。
外の空間はすべて雨と風の音で埋め尽くされていていつもの木々の音や虫が鳴く音なんて一つもしていなかった。もちろん月も星も見えないから漆黒と激しい雨風の音しかない。
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