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ゴールデンタイム。
人にはそれぞれ 自分の中に
特別な時間があるはず…
それは 私にも。
「よっ」
「お疲れ」
「行こか」
0時を少し過ぎた頃。
彼との待ち合わせ。
この時間には ほとんど人通りがない。
「うん」
そう。私たちは
一緒にいるところを見られてはいけない。
真夜中とはいえ…徹底して
「それにしても 急やったね」
「うん あいつ飲み会」
「そっか」
「お前 よく出て来れたな」
「こんな時間にめったに予定なんかないよ」
いつも行くホテル街。
似たような関係の人も多いから
紛れる事が出来て丁度良い…。
「ここでえぇ?」
「え?高くない?」
「たまにはえぇんちゃう」
彼は私が生まれて初めて 一目惚れをした人。
そして 大切なものを捧げた人。
ただ…出会った時から 人のもの。
「凄い 映画見れる数 倍やで」
「えぇから はよ」
「…うん」
だから 彼の都合の良い時に
誰にも見つからない様に
私たちは ただ 体を重ねる…。
ただ それだけ。
そして その時間は こんな真夜中のほんの一瞬。
終わってしまえば…
「ほな 気を付けて」
「うん! ありがとう」
帰りは別々。
「あのさ!」
「なに?」
「今度 言ってた映画 見に行けへん?」
「あー それあいつともぉ行ったわ」
「!…だよね」
「じゃぁな」
「うん、また連絡して」
人通りもない。真夜中に会う。
私にも都合が良い。
だって……………
「う゛ぅ゛…」
どんなに泣いても。
誰にも見られないで済むから…。
これで良いの…。これが良い…。
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