僕と本とセカイと世界

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僕と本とセカイと世界

本だけが僕の友だちだった。 小さい頃から、本を読むことが好きだった。 人見知りで、口下手で、休み時間は1人で本を読んでいる、そんな子どもだった。 そのため小学校、中学校と、友だちと呼べるような人間はいなかった。 「本の虫」なんていう、ベタなあだ名もつけられていた。 どこにも僕の居場所はなかった。 そのことが一層、僕を読書に夢中にさせた。 本を読んでいると、まるでどんどん水中深くへ潜っていくみたいに、クラスメイトたちの楽しそうな笑い声も、「本の虫」と僕をからかう声も、何もかもがだんだんと遠のいていき、聞こえなくなる。そして、僕は冴えないひとりぼっちの少年から、異世界を大冒険する勇者にも、巧妙なトリックを暴き事件を鮮やかに解決する探偵にもなれる。 本の中だけが僕のセカイだった。
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