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「……ありがとう、みなさん」
ゆっくりとした穏やかな声に、全ての歓声が静まりかえる。
世界は初めて、真呼美の声を耳にした。
歌でない、祈りでない、意思ある言葉としての声を。
「今日という日が来たことを、喜ばしく想います」
世界が待つ。
真呼美の声を。
神を誘う踊りを。
胸を高鳴らせて、待ち焦がれる。
ゆっくり、真呼美は微笑み、楽しそうに口を開く。
「――まったく、こんなにも危ない踊りを、この星ごと踊ってくださってねぇ?」
三日月のような笑みと、青い舌。
紫色の皮膚をさらして翼を生やした姿は、まるで、神話の悪魔によく似ている。
――ただ、その姿に違和感を持つ者は、もういない。
――世界は狂乱のなか、魔界の空気をその身に呼びこみ、その身を変えてしまったのだから。
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