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姿を変えたのは、人だけではない。
魔界の瘴気を吸った森は変貌し、そこに住まう動物達は異形の姿に変形し、水も大気も魔物が住まうものへと適合した。
宇宙ステーションに取り残された、かつての人間達。
彼らは変貌したその眼で、紫色に変貌したこの星を、愛しげに見ている。
――人間は滅び、神話の中の悪魔だけが、変わりゆく地上の支配者となった。
「あぁ、心地よい。これこそ……悦楽と平和に染まった、あなた達の望んだ世界」
恍惚とした眼で、真奈美は葡萄色の空を見上げる。
まるでワインを含むかのように、愛しげに毒の大気を吸う彼女。
――ほんの少し、ネットワークという水に毒を混ぜて、こんなにうまくいくなんて。
真呼美は、その誘いをしただけだ。
熱狂と興奮。
肉体を行使する儀式は、一部の知恵者を塗り潰すほど、大多数の人間達をとらえてしまった。
「二つの世界は交わり、もう離れることはありません。……私はそれが、本当に愛しい」
――悪魔に、自らを顕現させる力はない。ならば、誰が彼女を呼び寄せたか。
真呼美がしたのは、少しばかりの細工だけ。
彼女が舞う舞台は、この世界とよく似せた、異界の舞台。
その瘴気と似姿を、人間に触れさせて、求め続けるような毒を仕込む。
異界の瘴気を呼びこむ、魔力をこめた美声と舞。
人はそれらの美酒に、少しずつ酔わされ、変質していく。
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