呼び誘う舞

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 連日更新される彼女のマイページには、アクセスが集中。  接続不能となることも多く、投稿先のサイトがバッシングされるという事態に。  もちろんそれだけ注目されれば、明るい話題に事欠く昨今、メディア関係者が見逃すはずもない。  いつしか雑誌に載り、ネットメディアに取り上げられ、テレビへと入り込み、人々の口の端にのらない日はないようになっていた。  ――なにがそんなに、人々の眼を惹いたものか。  老若男女、重ならない層が口をそろえる魅力。  それは、その美しい肢体から描かれる舞と、聞く者の耳をくすぐる歌声だという。  ……世界は広く、人々の心や嗜好は、探りきれないほどに深い。  世代、性別、嗜好、環境、メディア性。  どんなカリスマや生産性を持ってしても、誰しもに十を満たす者など存在しない。  なんらかのズレは個々にあり、一人の魅力がそれを満たすことなど、夢物語でしかないのがわかってしまっている。  もしそんな存在がいるのならば、それは、神に等しい力をふるっていることになる。  ――だがそれらの障壁を、真呼美の踊りは、軽く凌駕する。  真呼美の魅力に、世代や性別は関係がなかった。  まさしく神を導く舞のように、いかなる者をも惹きつける。  最初は、ネットワーク上からの口コミだった。  次第に、人気テレビ番組の『今話題の、気になるあの人』でも取り上げられるなど、次第に一般人への浸透も進んでいった。  そうなれば関心は、歌や舞などのオリジナリティの他にも、あがってくる。  彼女自身の人格、嗜好、生活。  創作側として以外の、個人としての魅力を求められてくる。  ……しかし彼女は、インタビューの依頼を無視し、プライベートを明かすことはなかった。  語らぬ彼女が更新し続けるのは、自身が描く歌と舞の姿、それだけである。  そうしたスタンスに批判もあったが、逆に、純粋な姿勢を貫く姿をよしとする意見もまた大勢であった。  わずかな断片から推測される、彼女の出生や私生活。  そのミステリアスさが、より彼女の神秘性に拍車をかけた。
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