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そんななか、ある無名ユーザーが、SNSで冗談めかしたカキコミをした。
――彼女、本当に存在するのか? まぁ、どっちでも関係ないんだけどさ。
ネットワークの映像にだけ存在する、魅惑の女神。
作り物のような信仰と魅力は、一時代を築いた人工ボイスアイドルのような不確かさも、確かに感じさせられる。
人工ボイスアイドルも、フォロワーの手で輝きを補強され、魅力を増していったからだ。
その無名ユーザーのカキコミは、真呼美という不確かさの魅力を、端的に表していた。
言うなれば、まるで都市伝説のように、彼女の存在は語られていく。
あることないこと、真実のような妄想や、妄想のような事実を含みながら、膨れあがっていく。
――アメノウズメのようだ、と、誰かがSNS上で呟いた。
俺達が忘れていた、大切なナニカ。
閉ざされていた天岩戸を開き、新たな太陽を見つけ、導いてくれる。
それを自分達に教えて、そのために必要な歌と舞を求めるよう、彼女はネットワーク上に現れたのだと。
盲目的に彼女を崇拝するその呟きは、しかし、圧倒的な賛同を得た。
ネットワーク上に共有され、各国で翻訳もされ、何千万もの共感があったという。
――つまり世界は、真呼美をそのような存在だと、信じていたのだ。
人々の心を統一し、安らぎと喜びを与え、平穏を与える存在。
願っても叶わなかったそれらの夢を、彼女は、ネットワークを駆使して惜しみなく与えてくれる。
――それが神の使いでなく、なんと呼ぶのだろう?
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