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道標の出現に魅せられた人々は、モーセに付き従った民のように、その後の道を追い始める。
自然とフォロワー達は、真呼美のようになりたいと考え、その舞を模倣し始める。
まずは、アーティストへの敬意として、同じ動きを模したいと願った。
舞だということも、世界に伝播するための容易さを提供する。
歌詞や声、文章や音楽ではない、生物の根源的な肉体を使う舞。
奇妙に誘われるその高揚感に、世界中が模倣することを熱望した。
真呼美に憧れる少女達。
カラオケルームでの同一感。
熱心なファン達の応援。
動画を容易に扱える時代は、魅惑の踊りを全世界へと伝播する。
――願わくば彼女と同じ場所で、舞いたいと願う。
だが、聖地とも呼ばれる撮影場所は、プライベート同様に探し当てることが出来なかった。
彼女の配信場所は多様だ。
古い木造りの建物から、石造りの台座を持つ神殿のような場所。
ステンドグラスを背景に奏でられた動画は、あまりの神々しさに、涙する者が後を絶たない。
まるで世界遺産のように荘厳で、格調高く、だがどの場所とも一致しない彼女の舞台。
彼女自身が編集したと推測される映像は、通常の配信映像の他に、高精密なVR画像も提供された。
圧倒的な臨場感とあわせるように、これが目的か、現場の吐息さえも伝えるハイサウンドが聞く者の耳へ沈みこんでいく。
――彼女の歌と舞は、生き物の深淵にあるナニカを引き出すような、奇妙なふるえがあった。
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