呼び誘う舞

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 国も国境も歴史も越えて、真呼美の踊りは、世界を混ぜる。  彼女が新たな動画を更新する時、期待と不安で社会は揺れ動く。  映し出された新たな姿を享受するため、仕事や学業を放棄する者まで現れた。  国会中の議員が辛抱たまらずスマホで盗み見し、不謹慎だと炎上したことすらある。  ――逆を言えば、枯れた花が水を求めるように、人々は真呼美の歌と舞を求めざるを得なくなっていったのだ。  はてには、国の首相に他国の大統領、独裁国家の将軍までも、その舞を絶賛する。  真呼美の一挙一動に、世界の流れが収束していく。  それはもう、一介の人の魅力ではない。  ――世界は、彼女が歌い舞う姿を、空気と同じように享受せねばならなくなっていた。  その様は、まるで太陽の加護を求める、暗闇の住人のようでもあった。  アメノウズメが、アマテラスを大岩から引きだす踊りをしたように。  真呼美もまた、世界の人々に隠されていた願いを、その踊りで引きだしたのだ。
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