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今や真呼美の動きは、世界有数の関心事。
彼女が静まれといえば、赤子の泣き声も、哀しき自然災害も、大国間の緊張も、静かに息を潜めるだろう。
なぜなら、彼女の声には。言葉には。
それらを従えてしまうだけの魔力が、こめられている。
――力が満ちているのだと、人々が信じ、従うように願っているから。
人々は、彼女の出現と存在を願い、その証拠である歌と舞に魅入られる。
我々の求めを、訴えを、わずかな繋がりから伝えようとする。
分析し、模倣し、同調し、熱狂する。
――まるでその存在を、この世界に顕在化させるための、儀式であるかのように。
口の端にのせ、時があれば歌を口ずさみ、集えば身体を舞いあわせる。
真呼美は、もう個人ではなく、人々の意識のどこかにしっかりと潜みこんでいる。
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