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にっこり魔女は笑う。人懐っこそうに緩められた唇。すこし茶色の混じった金髪。街灯にグリーンの瞳がぴかりと光る。
ばちばちと小鳥の周りでは雷に似たナニカが光る。小鳥をかたどった持ち手の杖を、魔女は僕に突きつける。
「あーんーなーいっ。お願いしたいなっ」
「……嫌だって言ったら、」
「あたしの手とステッキが滑っちゃう」
「分かったよ。どこに」
にこーっと魔女は笑って、くるんと杖を回す。こんこん! アスファルトを叩いたら、ぴたりと雷撃は収まった。
「やったぁ。あたし、あなたのことなんて呼ぼう」
「どうぞ、なんとでも」
「名乗らないあたり、賢いよね。あたしが魔女って信じているの?」
「まぁ、それなりに」
「断言もしないもの。とても賢い」
「……」
「まあ魔女と賢き者は相性が悪いと相場が決まっているのだけど。たいてい魔女の邪魔をするのは賢者と老人、愚か者……まぁ魔女も人々の邪魔をするのだけど。だって魔女だものね?」
こんっ! 首から下げたラジオを小鳥が叩く。微かに流れていたラジオのパーソナリティの声がぴたりと止まる。
「夜は、お静かに」
「……で、どこに行きたいわけ」
「んん。……きっと君は分からないと言うでしょう」
「予言?」
「ええまあ。あたし、」
こんっ! アスファルトを小鳥のくちばしが強く叩く。バトンのようにくるりと回すと、ごう、と炎の燃える音がした。
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