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「ふぅん……、じゃあ、ステッキだけ?」
「ええ、とりあえずは。トゥトゥは……、ああ、この鳥の名前ね。トゥトゥはあたしと同じ日に生まれました。そんで、あたしの9歳364日目に死に、あたしの10歳0日の日にこのステッキの上に飛び立ち、あたしの横に永遠にいるのです」
「へえ……」
「トゥトゥがいるから、このステッキでひと通りのことはできるかな。Do you understand?」
「うん、まあ……」
くるくるっとバトンのようにステッキを回す。青い炎が視界に燃え付く。
「たぶん、あたしの人生にとって、最初で最後のステッキね。もしも折れたらどうしよう……、」
ぶんっ、とステッキが回る。ぴたりと足を止めて、魔女は鋭い口調で囁く。
「ちょっと黙っててね。――良い夜ね、ごきげんよう!」
こんっ! ステッキの音が響く。無言の魔法。
真っ先に視界に生まれたのは黄色の目。
こん、こん、こんっ、
輝く鼻梁、金の髪と細い腕。水中から浮かび出たような仕草で、少女が髪を払う。
人外。金に燃える口を開く。音程を踏み外した、聞き取りにくい音声だ。
「おハよう、れる」
「おはよう。どうしたの?」
「れるが、さがシもの、してるっテ」
「ああ、あなたのお母様から聞いたの? それで、わざわざ?」
「うん。ママは、れるガ、だいすき。シってるヨね?」
「もちろんよ」
小鳥のまとう炎が激しさを増す。魔女は小鳥をあやすように小さく地面を叩いた。
「……わざわざありがとうございますって、お母様にお伝えしてくれる? 今度の捜し物は、あたしが見付けないといけないの。ごめんね」
「……れるは、おテつだイが、いらナい」
「今夜に限ってね。また、頼む日がくると思う」
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