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私の名前は小野晴美。少し背が低いのが気になっている普通の中学2年生。
私の住んでいる又旅町は海に面した小さな港町で、あちらこちらにお魚好きな猫の姿が見れる。猫達はのびのびとして好きなところで好きなように暮らしているためか、最近は猫目当てで観光客がくるほどの猫の町。
かくいう私も猫を飼っている。去年の夏休みにおばあちゃんからもらった三毛猫のアリーナだ。
洋風の名前をつけたのはお母さん猫がペルシャ猫だったらしく、三毛猫のくせに、毛がふわふわとしていて目が水色と緑だったから。左右違うのも珍しいけど、三毛猫でオスなのはもっと珍しいっておばあちゃんが言ってた。きっと神様の使いで私に幸運をもたらすからと譲り受けたのだ。
あれから1年、特に幸運なことはないけど、アリーナは私になついているのかあまりよく分からない。学校から帰ってくると玄関まで見送ってくれるし、寝るときも一緒だけど、私が友達と遊んでいる時は急に離れていってしまったり、友達が帰ったあともしばらく私からはなれてじっとこちらを睨んだり・・・。
もし、アリーナと一度でもお話が出来たらいいのにと思った事がある。気まぐれな猫が何を考えているのかちょっと興味があるからだ。
まあ、そんな魔法みたいな事は絶対に起こらないだろうとその時の私は思っていた。 その日はなんの変哲もない6月のはじめのころだった。梅雨に入りかけのこの頃、なんだか身体がだるく、肩が重たい日が続いていた。気の早い夏バテなんじゃないかとお母さんは笑っていたが、最近アリーナが私の近くに寄ってこなくなったのが少しショックだった。何かを睨むように私の方をじっと見つめているのだ。食べかけの朝食であるベーコンエッグをフォークでつつきながら、
「なあに?わたしの顔に何かついている?」
などとアリーナに聞いてみたが返事はもちろん無かった。ジトっとした目で私を見つめると母の用意したネコカンをモシャモシャと食べ始めた。
「ごちそうさまぁ」
私は朝食をそこそこにきりあげてダイニングの席を立つ。
「あら、半分しか食べてないじゃない大丈夫?」
「うん、おなかいっぱい。そろそろ学校に行かなきゃ」
玄関で靴を履いてると、ふと視線を感じて振り返った。廊下の端でアリーナがこちらをじっと見つめているのだ。
「いってきますアリーナ」
返事はない。返事の変わりか分からないが短めの尻尾がクルリと揺れた。
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