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「だった・・・・・・?」
神と名乗った妖狐は後ずさる私をさらにおいつめる。私は背中が壁につき、それ以上逃げることが出来なかった。妖狐は覆いかぶさるように壁に手をついて私を見下ろした。その瞳と身体全体から放たれる紫のオーラに私の身体はすくんで動かなくなってしまう。妖狐は私の頤をつかんで無理やり視線を合わせた。
「それとも、私の一部になるか・・・・」
ニヤリと笑ったその顔は、狐そのものだった。つかまれた指先が冷たく、そこから私の体温を奪い去ろうとしている様に感じる。私は何とか喉から搾り出す声でその誘いを否定した。
「誰が一部になんか・・・貴方こそ、悪霊を使って人間に一体何をさせようとしているの・・・!?」
陳腐な質問だといわんばかりに、弧を描く瞳が薄く開いた。
「復讐・・・私が永き時を守り続けたという土地を人間は勝手に荒らし滅ぼした。その復讐だ」
うっすら見える瞳の中に吸い込まれそうになり声も上げられずその場で固まっていると、急に妖狐があたりを見回してヒクヒクと鼻を動かした。
「・・・どうやら邪魔が入りそうだ。私はこれで失礼する。いずれ・・・・・また会うことになるだろう」
そういうと、妖狐はビルの柵に器用に建つとそのまま柵を蹴り上げてビルから飛び降りた。
「!!」
私は急いで後を追ったが、ビルの下には人だかりだけで妖狐は跡形も無く消え去っていた。
「晴美大丈夫か!?」
アリーナに纏わりついていたオーラが消えて、何とか起き上がると私の元へ走り寄ってきた。
「アリーナ!!」
私は先ほどまでの恐怖から一気に脱力して、アリーナの胸に倒れこんだ。
「晴美!俺がついていながら・・・・ごめん。怖い思いさせて!!」
アリーナのひきよせる腕が強くなった気がした。私はされるがまま抱きしめられる。いつもは少し恥ずかしいけど今はこんなにも安心できる場所だった。
「お二人とも大丈夫ですか?」
そこにねこまた堂さんがなぜか現れた。
「ものすごい負の力を感じて来ました。ここは騒がしい、早く私の店に」
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