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「あー、なんなのあいつ、なんであんな奴がモテるのか全くわかんない!!」
ミミは怒り心頭といった風に廊下を乱暴に踏みつけて歩いていた。
「ごめんミミ・・・私のせいで・・・」
「ちがうよハム美!今のはぜーったい金福寺が悪いの!」
ミミのハム美絶対主義説には、私も閉口してしまう。うれしいが時折周りとのトラブルになるのがなんだか申し訳ない。
保健室につくと、顔色の悪さから先生から早退を言い渡されてしまった。と同時に5時間目の予鈴が鳴り響く。
「私かばん取って来てあげる!」
ミミはそういうと廊下を飛び出していった。保健の先生からもらった頭痛薬を飲んでいると、おどろく速さでミミが戻ってきた。
「はい、かばん。お大事にね!先生には私から言っておくから!」
「ありがとうミミ!」
「じゃーねー、5時間目はじまっちゃう!」
フラフラとした足取りで、学校から帰る途中、通学路途中の公園に差し掛かった。その公園は、遊具などはなく木々とベンチが数脚ある静かな場所だったが今日はなぜか猫の声が多く聞こえた。不思議に思った私は、公園を覗いてみると、ベンチに座った浴衣のような和装の格好をした男の人の周りに十数匹の猫が集まっていた。
(まるで猫使い・・・)
そう思ってクスリと笑ったとき、足の力がカクリと抜けてしまい、倒れそうになる。意識が遠のきそうになるのを少し高めなテノール調の優しい声に起こされた。
「大丈夫かい?」
はっと気がつくと、私は、ベンチに座っていた男の人に抱きかかえられていた。深めの麦藁帽子をかぶっていた男性の顔を覗き見ると、縁の黒い眼鏡の奥に涼やかな瞳と鼻筋の通った顔を見て私は抱きしめられている強い腕の力もあいまって顔が真っ赤になってしまった。
「は、はははい!あ、ありがとうございます。」
男の人は私をベンチに座らせた。私が座ると、今まで居た猫達は一斉にどこかへいってしまった。
「あ・・・」
アリーナだけではなく、他の猫にまで嫌われてしまったのかとガクリと肩を落とす私を男の人は無言でじろりと見つめていた。
無精ひげが生えている顎をこすりながら何かを思案していたかと思うと、懐から水筒を取り出した。
蓋の中に透き通った透明の液体をコポコポと注いでくれると私に差し出した。
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