3人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
気が付くと僕は、いつも彼女を目で追っていた。
京阪線出町柳行きの準急列車。
その三両目右奥の吊革に掴まり、名も知らぬ彼女はいつも物憂げな表情で佇んでいる。
端正な顔立ちをしているが飛び抜けた美人という訳ではない。むしろ装飾の少ないシンプルな服で全身を固めるその印象は、傍目に見ると地味と捉えられてもおかしくは無いだろう。
しかし何故か、彼女がいつも視界から離れない。
艶やかに靡く薄茶の髪も、澄んだ切れ長の黒瞳も、何処か気怠げな雰囲気も。その全てが僕の瞳を釘付けにする。まるで磁石の両端の様に、僕の視線を惹きつけて離さないのだ。
これは恋心か?それとも他の何か?
最初のコメントを投稿しよう!