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ある夜、ベッドが揺れる振動で里井さんは目を覚ました。地震のそれではない。隣で寝ている妻から振動が伝わってくる。
見ると、背を向けて眠る妻の体が豆灯の弱いあかりのもと、ゆさゆさ動いている。
胎動が妻ばかりか、ベッドさえ揺らすのか。我が子ながら胎児の力強さにほとんど呆れつつ、里井さんはいつものように妻のお腹に手をやった。
と、その手にかぶさるように里井さんの背後から別の手がそっと重なった。
そして里井さんを、妻を、激しく揺さぶりだした。
人肌の熱と厚みをそなえた成人男性とおぼしき手だったという。
このことを里井さんはまだ妻に話していない。
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