妖狐VS猫又

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妖狐VS猫又

「ねこまた堂さん、あの人は一体・・・」 店の奥にある居間で私は出されたお茶を飲まずにじいっとみつめながら呟いた。今でもあの瞳に魅入られた時、覚えた戦慄を思い出すとうまく言葉を紡ぐ事が出来なかった。 ねこまた堂さんは珍しく難しい顔をして腕を組んで小さな溜息をひとつする。 「あの人、自分の事を『妖狐』って言ってました。あと、人間に復讐するって・・・」 「『妖狐』・・・やはりそうでしたか・・・・しかし復讐とは穏やかな話では無いですね」 ねこまた堂さんは、妖狐の事を知っている様だった。ねこまた堂さんは、目を瞑りながら眼鏡を取り、ポケットから取り出したハンカチでガラス部分を丁寧に拭いていた。 「彼の瞳はこのような色ではなかったですか?」 そういって目を開くと、ねこまた堂さんの瞳はあの妖狐と同じ赤い色をしていた。 「!!・・・・・はい。でもなんで妖狐とねこまた堂さんの瞳の色が同じなんですか・・・・」 「この神代(かみよ)の赤い瞳は神であることの証でもあります。彼は、この土地の神である筈なのに悪霊を使役し、守るべき人を襲っている・・・・」 ねこまた堂さんは、眼鏡をかけなおすと、思いあたる節があるように会話を続けた。 「先日、晴美さんと金福寺君で除霊をしてもらった工事現場・・・・あそこはもともと『鎮守の森』といわれた場所で、そこには、一人の神が永い時を見守り続けていました。その森を開拓してしまった事で神であったものが『妖狐』となってしまったのかもしれません。ここ最近の悪霊騒ぎの原因も、おそらくは『妖狐』の仕業でしょう。」 「そんな・・・じゃあ元々悪いのは人間の方じゃないですか・・・」 「そうかもしれません。しかし、この世界は人間のものです。いずれは人に明け渡さなければならないのも宿命です」 確かに悪霊のやることは私達人間に害を及ぼす。でも、私は鎮守の森を身勝手に奪っていった人間達側にも配慮の足りない部分があると思った。
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