西瓜

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どげんしよう、どげんしよう、そう思ったったら男の子が口を開いた。 「スイカ、食べんね」 僕は震えが止まらんくなってしまった。なんでって、ばあちゃんに良く言われとったったい。 「あの世の人に会っても、食べ物だけはもらったらいけんよ。連れていかれっとばい」 もう僕が寝たふりしとるとはバレとったと思うよ。凄く震えとったし。 でも歯を食いしばって絶対スイカ食べんぞって、とにかく寝たふり続けるしかなかったと。 隣の部屋からは、大人たちの楽しそうな声が続いとった。気づいてくれ、気づいてくれと念じよったけど、そういう時に限って誰も来ん。 やがて男の子が立ち上がって、やった、どっか行く、そう思った次の瞬間、男の子は僕の身体を跨いで仁王立ちになったったい。そんで、上からまたじぃぃぃいっと僕の顔を見よる。 冷や汗がドッと出てね。 そしたら男の子はスイカ食べだしよったと。僕の顔の上で。 シャクリ。 美味しそうな音でかぶりついて、 ボタボタ。 スイカの汁が落ちてきよって。 僕の顔にたい。 シャクリ、ボタボタ。 シャクリ、ボタボタ。 汁がどんどん、どんどん落ちて来よってね。 シャクリ、ボタボタ。 シャクリ、ボタボタ。 シャクリ、ボタボタ。 汁が、汁が口に染み込んで来るとよ。 どんだけ口を閉じとっても。     
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