西瓜

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シャクリ、ボタボタ。 シャクリ、ボタボタ。 シャクリ、ボタボタ。 僕はたまらんくなって、もういいけんと思って、口と目を開けて悲鳴を上げたったい。 口にスイカの汁がどぅと流れ込んで。 その瞬間、見たとよ。 男の子の顔。 やっぱり、なかったと。黒い渦巻きしか、なかったと。 また僕は悲鳴を上げて、そしたら襖が横にばたんと開いて大人たちがワラワラとどうしたと、どうしたと、と入ってきて、僕は母に抱きしめられた。 「怖か夢でも見たっちゃろ」 よしよし、と抱き上げられながら、僕は周りを見渡した。いとこ連中の姿も見えたけど、あの男の子のすがたはどこにもなかったし、僕にスイカの汁も付いとらんかった。 やけん、あれはやっぱり夢やったんやろうか、いやそれにしてはハッキリしよった、と思いながら20年過ごしてきたけど、まぁそれでなんとなく今もスイカは避けとるよ。 また食べたら、そん時はほんとに連れて行かれるっちゃなかろうかって。 阿呆らしかけどね。
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