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私は大通りに立ち並ぶカフェの一つを覗いてみた。いかにも若者が好みそうな、欧州風のカフェであった。テラス席もあり、早朝のように新聞を読むスーツ姿の男性など多くの客で混雑していた。店外に漏れるオレンジ色の照明が、どこか昭和の雰囲気を醸し出している。
中々いいカフェじゃないか。
私は店内に入り、女性店員にコーヒーを頼んだ。スタイルの良い、美人な女性だった。私の好みだったこともあるかもしれない。いつのまにか話しかけていた。
「いつもこの時間まで営業してるんですか?」
女性はお手本のような笑顔で答えた。
「はい!お客様、初めて見ますね」
「ああ、お恥ずかしながら、目が覚めたら大通りで寝ていましてね。恐らくこの街に来たのも初めてかと」
女性店員が一瞬笑顔を崩した気がした。
「そこの大通りで・・・」
私は何か違和感を感じた。
「それにしても、こんな時間まで営業するカフェなんてあまり聞いたことがありませんが」
女性店員は今度は明らかに無表情になった。
「この時間であれば、よくあることだと思いますが・・・」
なんだろうこの子。
「まだまだ昼ですよ?」
「昼?」
私はもう一度時計を見た。私の時計は変わらず午前四時を指していた。
早朝とは言っても、昼とは言わないだろう。
店員はどこを見ているか分からないような目で、動きを止めていた。
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