真夜中の街

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ここはどこなんだ。少しでも手がかりが欲しかった。 恐らくここは、私が元いた世界ではないのではないか。 汗が体にまとわりつく。熱が増した頭で考えるが、何も思い浮かばない。携帯も財布も記憶もないのだから。 私はネオンで染まった街を、荒い息で走った。 すると見覚えのある、レンガ造りの銀行を見つけたのだ。 しめた!私はいつか、この銀行に来たことがある!! 私の覚束ない記憶の中で、やっと手がかりを得られたのだ。 助けてもらえるかもしれない。 私は希望にあふれた表情で、銀行に足を踏み出した。 自動ドアが開き、銀行の中に入る。 9つ並ぶ窓口が営業しており、窓口の前に並ぶ椅子に客が座りきれないほど賑わっていた。 普通の銀行であった。この深夜に営業をしているということを除けば。 私が入り口で立っていると、案内役の行員がにこにこしながら私に話しかけてきた。 「本日はどのような御用でしょうか」 私はこの年配の行員に見覚えがあった。 「あ!あなた!私を覚えていませんか!」 「いえ、お会いするのは初めてかと思いますが」 「そんなはずは!この前だって!」 言ったものの、その会った記憶が私の中で抜けていた。 「申し訳ございません」 行員は平謝りをした。困惑した表情の行員に対して、更に追い打ちをかける勇気はなかった。しかし私は安心していた。先ほどの店員のような、頭のおかしい人間ではなかったからだ。 その時、店内で女性の悲鳴が響いた。
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