真夜中の街

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私は賑やかな大通りを卑屈な気持ちで歩いた。走る気力さえ、奪われていた。 手足は冷え、動悸が襲ってきた。まるで世界から取り残された気分だった。 そもそも私は昨日までどこで、どんな生活をしていたんだっけ。 私はずっとここにいたのではなかったのか。 だんだんそんな気持ちになっていた。街に、心が食われていたのかもしれない。 どれくらい歩いただろうか。初めて左にそれる道があった。 覗くと、街灯も何もない真っ暗な路地裏だった。 とにかく、人がいない場所に行きたかった。不安に思いながらも路地裏を進んでいく。 大通りを歩く家族連れや恋人たちの声が、フィルターがかかっているかのように静かになっていった。 一歩一歩、なんとか歩いて行くと、今度はマンションの立ち並ぶ住宅街に出た。そしてマンションに囲まれるように、真ん中に小さな公園があった。先ほどの大通りとは打って変わって、人はまるっきり見当たらなかった。 公園には街灯が一つだけあり、その下の赤いベンチを照らしていた。近づくと、一人の男性が街灯の灯りに照らされるように、うつむいて座っていることに気づいた。 本来ならば真夜中に一人でベンチに座る見知らぬ男性を見れば、怖いと思うだろう。しかし私はさっき見てきたどの人種よりも信頼できる、まともな人間だと直感していたのだ。
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