第1章

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 ここが田舎町のさらに外れだというだけで、街では24時間絶えずどこかで人が働き続けている。  興味に駆られた僕はその夜、市の中心部に向けて歩き出した。  時刻は2時を回った頃。都会ならともかく、この辺りでは人通りはない。  今すれ違った車の運転手も、ひょっとして下半身が無かったりするのだろうか。  おっかなびっくり歩いていると、前を歩く人影を見付けた。  パーカーを着た少女の姿。振り向くと、フードの中は空だったりするのかも知れない。  足音に気付いたのか、少女はちらちらと振り返る。  安心した。中身はある。  野暮ったい黒縁眼鏡。中途半端に伸びた黒髪。  普段の僕なら同年代の少女というだけで、気後れして目を逸らす所だ。  だけど、普通の姿をしていたという安堵から、ぎこちない笑みを浮かべ挨拶をした。 「……こんばんは」  少女もコンビニへ向かう途中だったという。  ぽつりぽつりと言葉を交わすうち、お互い同じ夜の世界を歩いている事を知った。  目にした夜の住人の姿や、昼間と違う姿を見せる景色の情報を交換する。  田園の間をただ歩き続けていた僕と違い、彼女はスマホでも夜の世界を垣間見ているという。 「こう……ね、外で見てると、入れた覚えのないアプリに変わってたり、変なサイトに繋がるの」  見せて貰った画面は、僕も遊んでいるゲームのものだったが、どこかおかしい。  色調は狂って紫がかっているし、見たことの無い文字の群れが並んでいる。 「LINEも知らないメンバーに入れ替わってるし……」  友達の番号で、日本語ではない不審な通話を受けてから、夜は電源を落としているのだという。  市の中心部に住む少女は、既に何度も夜のコンビニへ足を運んでいる様子だ。 「何か見ても声は出さないで。おかしかったらすぐに出るから」  何がおかしいというんだろう?  夜道とは違い、ここには必ず店員がいるはずだ。  入店のチャイムが鳴るものの、店員の挨拶の声は返ってこない。  棚を眺めながら歩くうち、さっき見たスマホの画面の様に、奇妙な文字の記された商品が混じっているのに気付いた。  少女は文字の読めるチョコレート菓子とアイスキャンディーを選びレジに向かう。  レジには棚出しをしていたらしい店員が立っていた。  口がない。  あるべき部分は、粘土で塗り込めたようにのっぺりとしている。
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