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「昨日はどうも、シャマ様」
相変わらずのニコニコとした表情、シャマは無愛想に振る舞うとメルルが彼女の袖を引っ張り訊ねた
「どうしたのだ、シャマ?」
「いえ、別に」
メルルに心配かけまいと彼女はキャスパーに向けて挨拶をした
「よく来たな、キャスパー・アルカード」
「私の事を覚えていてくださっていたとは、光栄です!」
「二人は知り合いなのか?」
「ええ、昨日、食事の席でご一緒させていただきました」
嬉しそうに答えるキャスパー、その表情や気配から悪意や殺意を感じず、シャマは一歩引いた、メルルとの挨拶を交わす場面なのだ、邪魔をするわけにはいかないと感じたからだ
「この度は、我がアルカード一族をお招きいただき、感謝します。」
「うん!今日は来てくれてありがとう!えっと…」
「キャスパーです。メルル様」
「うん!来てくれてありがとう!キャスパー!」
メルルが差し出した手、キャスパーも白い柔肌の手を差し出し握手を交わした
―――ッ!!
シャマを襲う強烈な殺意、一瞬だが、それが彼女の警戒態勢を最大レベルまで引き上げさせた
シャマは周囲を深く警戒する、仮面の奥に見れる赤い瞳がギョロギョロとメルルの周囲にいる者の顔を捉える
(誰だ、今の殺気は!?)
一瞬だ、一瞬だったが強烈な殺意をメルルに向けた者がこの中に居たとシャマは感じた
だが、誰もがそれに該当しない、目の前にいるキャスパーですら、平穏なままなのだ
「どうした、シャマ?」
「もしかして、グラスが割れる音にびっくりしちゃった?」
シャマの様子の変化に気付いたメルルは訊ねる、シャマはハッと我に返り視線を移すと小人がグラスを落としていた
「い、いえ……、気のせいでした」
「ん?そっか!」
気を張りすぎていたのかもしれない、神経が過敏になっているせいで少しでも妙な音に過剰に反応してしまったのだろう、シャマは深呼吸し再び警戒を続けた
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