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深夜二時
トイレの掃除も終わったし、賞味期限チェックも終わった。飲料の補充も完璧だ。
「また暇だねえ」
「っすね」
「この時間を、朝の忙しい時間に分けてあげられたらいいんだけどね。七時から八時とか、混む時間」
「そっすね」
オーナー三木元は拳骨が入りそうな欠伸をした。それが伝染したのか、アルバイトの谷も小さく欠伸する。
「よし、谷くん。エアー卓球しよう」
「っす」
カウンター奥の狭い空間で二人は向き合う。動きがかなり制限されるが、エアーなので問題ない。
「じゃあ、11点マッチね。サーブ谷くんからでいいよ」
「あざっす」
谷のフォームは彼が好きな石川佳純選手に似ている。時々しゃがみ込みサーブも繰り出してくる。
「コン」
「コン!」
エアーなのでピンポン球が台の上を跳ねる音も自ら状況説明しなければならない。
「コン」
「トアッ」
急に右半身を後方に引くモーションを速くし、三木元がスマッシュを繰り出す。それを見送る谷。
「あっ、反応できなかったっす」
「サアーーーーー!」
拳を突き上げる三木元。エアー卓球はちょっと面倒臭い。
想像力を働かせながら、二人は熱戦を繰り広げた。
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