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「休憩いただきました」
スタッフルームから谷が欠伸しながら出てくる。卓球を終え、三十分の休憩を取っていたのだ。裏には大きめのソファがあり、夜勤組の掛け布団も置いてある。
「賞味期限チェック終わってるよ」
「あざす」
オーナー三木元はハツラツとした表情だ。五分前に栄養ドリンクを飲んだところだった。実際の効果ももちろんあるのだが、飲んだという事実が本人に本来以上の効果を与えていた。
「谷くん、じゃあ、防犯のおさらいをしようか。コンビニ強盗が多い時代だからね」
「うす」
「じゃあ、僕が強盗の役するね」
三木元はカウンターから売り場に出て、中腰で構えると、エアー包丁を谷に向けた。
「おうっ、レジの金を袋に詰めやがれ!」
なぜかオーナーはいつも北野武のモノマネをする。声だけはそっくりである。
「すんません、ちょっと待ってください」
谷はデニムのポケットからスマホを取り出して操作する。
「おいおい、谷くん。何やってんの。LINEでもきたの?」
拍子抜けして三木元は谷のいるレジに近寄る。すると彼はスマホの画面を見せてくれた。開かれているのはツイッターで、「うちのコンビニに強盗きてるなう」と文字が打たれている。
「ちょっと、谷くん。強盗きて、そんな悠長にSNSなんてできないでしょ」
「なんか、しれっとできないっすかね」
「何考えてんの。殺されちゃうよ」
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